注目するキーワードから考える2021年のNPO

2021年が始まりました。2021年がどのような年になるのか、私が注目するキーワードとともに考えてみたいと思います。今後の非営利団体の広報やファンドレイジングの計画を考えるにあたっての発想のお手伝いになれば幸いです。

デジタル・トランスフォーメーション

2020年は他の業界同様に、多くの非営利団体が対面活動のオンライン化や動画を使った情報発信、インターネットを活用したファンドレイジングなど、デジタル化に取り組んだ1年だったと思います。2021年は、2020年に導入したデジタルツールの効果の測定や棚卸を行い、目的・目標に応じたツールの選別が行われると考えています。2020年はこれまでの対面活動(リアル)をオンラインに乗せ換える「デジタル化」だったとすれば、2021年はリアルでの実践を前提とせずに初めからデジタルのみを軸にサービス提供、ファンドレイジング、広報活動を計画する「デジタル・トランスフォーメーション」(DX)が注目されると思っています。

受益者の代弁や世論形成(アドボカシー)

2020年は、コロナ禍の中で多くの非営利団体が受益者や関係者にアンケート調査を行い、政策決定者や報道機関に 調査結果を伝え、政策決定や世論形成に影響を及ぼしました。これまで非営利団体の広報と言えば、会員・寄付者・ボランティアといった支援者の獲得やイベントへの集客など、人集めや金集めに対する期待が高かったと思います。2021年は、非営利団体の広報に対して受益者の声を社会に広く伝える拡声器(マイク)的役割と世論形成といったアドボカシーを担う期待が高まる年になってほしいと思っています。非営利団体の活動はサービスの提供だけではありません。社会を変えていくためにはアドボカシー活動も重要なのですから。

組織基盤の強化(キャパシティ・ビルディング)

非営利団体の資源は常に限られています。限られた人材や財源を有効に使ってより多くのことに取り組もうとしている非営利団体にとって組織基盤の強化は欠かせません。これまでの非営利団体はサービス提供やプロジェクト拡大など事業の推進に軸足があり、ミッションやビジョンの明確化や人材育成、職場環境の整備など組織基盤の強化にはあまり目が向いてきませんでした。コロナへの不安が消えないなか、強固な組織基盤を持たずに無理にサービスの提供やプロジェクトの拡大を行おうとすると組織の不安定化につながる可能性すらあります。2021年は組織基盤の強化に取り組む非営利団体が増えると考えています。

うまく適応できる能力(レジリエンス)

近年、自然災害が発生するたびにレジリエンス(resilience)という言葉が注目されています。レジリエンスとは脆弱性(vulnerability)という言葉と対になる概念で、一般的には「復元力」「回復力」「弾力」を意味します。レジリエンスを強靭性と訳すこともありますが、困難や脅威に直面している状況に対して「うまく適応できる能力」「うまく適応していく過程」「適応した結果」「自発的治癒力」といった意味で使われることが多いのではないかと思います。コロナ禍と言われるように新型コロナウイルスの感染拡大も災害です。非営利団体がコロナ禍を克服していくために、2021年はレジリエンスという概念が改めて注目されるのではないかと思います。

社会全体に新型コロナウイルスの感染拡大の不安が蔓延し、経済活動が停滞する中では、事業を維持することで精いっぱいで、事業拡大や事業創出は簡単ではありません。2021年は、拡大ではなく進化や深化を考える年にしていくことが必要なのだろうと思います。団体の知名度を上げて新規支援者の獲得を目指すよりも、既存支援者と継続的なコミュニケーションを行い、しなやかで強く深い関係づくりを目指すのはどうでしょうか。

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