Z世代に選ばれるNPOとなるために

NPOは常に次世代を担う若者たちに注目してもらい、参加してほしいと思っています。ソーシャルセクターにおいてZ世代への期待は当然かもしれません。Z世代に参加してもらえるNPOになるために、いまからできることを考えてみたいと思います。

Z世代とは

Z世代とは、明確な定義があるわけではありませんが、おおよそ1997年から2012年の間に生まれた世代(2024年時点では12歳~27歳程度)を指します。生まれたときからインターネットやソーシャルメディアが普及し、子どもの頃からパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を使いこなしているため「デジタル・ネイティブ」とも言われます。Z世代は社会的活動や政治的活動が活発なため、海外では「アクティビスト世代(Activist generation)」「フィランソロキッズ(Philanthrokids)」などとも呼ばれているようです。

Z世代の参加を増やすためにNPOができること

透明性を高め、誠実になる

Z世代はインターネットやソーシャルメディアを通じてリアルタイムで世界の情報を知る機会が多い世代であり、環境問題や社会問題に関心を示す世代です。自分たちが関心を寄せるテーマについて情報を得て、教育も受けています。環境問題や社会問題に敏感なZ世代にとって、透明性や誠実さは重要な指標になります。Z世代は、ウェブサイトやソーシャルメディアで綿密な下調べを行い十分な知識を得たうえで関わるNPOを決めます。それは安心してNPOに関わるため、失敗しないためです。透明性に欠けたNPOは必要な情報が手に入らないために、Z世代の選択肢にはならないと考えられます。また、ネガティブな情報を隠すNPOや成果を大げさに発信するNPOはZ世代からの信頼を失います。寄付の使途・影響やボランティア活動の目的だけでなく、活動における課題や失敗といった情報まで公開することがZ世代からの信頼を築くことになります。

「NPOの通貨」を稼ぐ ~「信頼」を高める~ コンテンツ

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2023.05.24

D&I戦略を取り入れる

Z世代は、ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包摂性)の重要性が強調された時代に育っています。そのため、Z世代は自分たちが関わるNPOにこうした価値観が反映されていることを好みます。これは、NPOの活動内容や受益者だけでなく、理事や職員にも当てはまります。ダイバーシティーとインクルージョンの視点が欠けているNPOは、Z世代から取り残されるかもしれません。寄付者やボランティアの多様性を受け入れ、自分らしさを尊重してくれそうもないNPOは、Z世代を惹きつけることはできません。

親近感があり実現可能なアクションにする

Z世代は、生まれた頃から低成長の時代が続いている世代でもあるので、現実的な視点を持っている面があります。NPOが掲げる大規模で壮大なビジョン・ミッションの実現を親近感があり実現可能なアクションとして伝えることができれば、Z世代からの支持を得やすくなります。Z世代は、失敗を恐れずに思い切ってやってみることを苦手としています。手が届かなかったり、達成できなかったりするような活動に参加することを躊躇するかもしれません。NPOは、具体的なアクションを強調し、そのアクションによる具体的な成果を紹介することで、Z世代に行動を起こしてもらう可能性が高まります。

時間とスキルの寄付

Z世代は、2024年現在では社会人の初期段階にいるため寄付できる財源が限られています。一方で、時間とスキルを寄付するボランティアには積極的です。Z世代は、自分たちが関心を寄せるテーマに直接的に参加することを大切にしています。成長意欲が高いこともZ世代の特徴です。プロボノやインターンシップ、フィールドワーク、スタディツアーの機会を提供しているNPOはZ世代が参加する入口を持っていると考えられます。Z世代は、相手の期待を考えて応えようとする相手志向やスペシャリスト志向が強く、協働も得意です。たとえば、Z世代によるコミュニケーションに関する諮問委員会(アドバイザリー・ボード)を設置し、Z世代の意見をNPOに取り入れることも考えられます。

プロボノとの付き合い方

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2022.06.01

P2Pファンドレイジングに取り組む

Z世代は、日常にソーシャルメディアが溶け込み、目的に応じてソーシャルメディアを巧みに使い分けて情報発信・情報収集しています。マスメディアやNPOからの情報よりも、ソーシャルメディアに慣れたZ世代は信頼する友人や知人からの情報を信頼します。また、Z世代は、同世代にロールモデルを見つけることができ、同世代から聞いたことのあるNPOを支援する傾向があります。P2Pファンドレイジングはこの傾向を活かすことができるファンドレイジングです。Z世代は承認欲求が高いとも言われるので、寄付額や寄付者数が多いファンドレイジング・ボランティアを表彰するなどの工夫も必要になります。

ピアツーピア・ファンドレイジングの進め方

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2023.03.17

Z世代は、すべての人が同じ価値観や行動様式を持っているわけではありません。ただ、Z世代の傾向から自分たちの団体を見てみることで新たな学びや発見があるかもしれません。