「伴走型支援」の 研究

伴走型支援という支援方法が、福祉の対人支援(ソーシャルワーク)分野や組織基盤の整備や強化と言ったNPO支援分野において注目されています。私なりに伴走型支援について調べたこと、考えたことをまとめておきたいと思います。

伴走型支援のはじまり

いつ頃から伴走型支援という言葉が使われ始めたのか明確ではありません。対人支援分野においては、生活困窮者や犯罪被害者、性的搾取や性暴力被害者を対象にした支援、教育現場での学生支援などで伴走型支援が見られます。

組織基盤の整備や強化などNPO支援の文脈で言えば、2011年の東日本大震災後から本格的に使われ始めたと考えられます。2012年から2013年にかけて実施されたワールドビジョンジャパンと日本NPOセンターによる共同プロジェクト「市民活動団体(NPO)育成・強化プロジェクト」事業検証報告書で「伴走型支援」という表現が見られます。このプロジェクトにはNPO支援の実績とノウハウを持つ全国のNPO支援センターのCEO級のスタッフがメンターとして参加しており、「NPOのリーダー層が政府の委員会等に委員として名を連ねるようになると、「伴走型」支援の考え方はそういった委員会でも討議されるようになり、行政の施策に反映される素地になっていった」と事業検証報告書に書かれています。

伴走か課題解決か

対人支援では、伴走型支援に対となる考え方として課題解決型支援があります。「課題解決型支援」は、生活上の困りごとを抱えた相談者(支援対象者)と面談し、相談者に関する情報を収集・分析し、自立した日常生活を営むために解決すべき課題の把握を経て、課題解決のための計画を作成・実行する支援と考えることができます。「伴走型支援」は、困りごとや課題が複雑で相談者本人も整理ができていないケースに有効な支援方法と言われます。ここで伴走型支援とは、持続的・継続的な支援と言い換えることができるかもしれません。NPO支援における伴走型支援も1回限りの支援ではなく、複数回の継続した支援であることがほとんどです。

支援か介入か

対人支援では、当事者以外の者が入り込むこと、争いやもめごとなどの間に入って干渉すること、具体的な支援計画を実行する段階のことを介入と言うそうです。このようなことを考えると、介入と支援は対立概念ではなく、介入も支援のひとつと言えるのかもしれません。

NPO支援においては、支援と介入の違いについて、「相手にはある/できる」ことを前提にした活動が「支援」、「相手にはない/できない」を前提にした活動が「介入」と、私は考えています。「相手にはある/できる」ことを前提にすると、あえて何もしないことも支援のひとつになりえます。ただ、支援と介入の違いが共有されていないと支援される側の不満につながります。なかには介入や支援でなく「代行」を期待する団体もあり、難しいところです。

伴走は目的か手段か

対人支援では、伴走することそのものが目的になっている場合があります。と言うのも、社会からの孤立や孤独こそが相談者の課題の背景にあり、伴走することで相談者(支援対象者)と社会をつなげることを重視しているからです。一方で、NPO支援では課題解決の手段として伴走を捉えていることが多いと思います。研修や講座で得た知識の習得だけではNPO運営上の課題は解決せず、知識を実践することによってはじめて解決することができます。実践に対する支援こそが重要であると言えます。

伴走の対象は人か組織か

対人支援の場合、当事者個人を対象に伴走することもあれば、当事者を含むコミュニティを対象に伴走することもあるでしょう。NPO支援でも同様に、団体のリーダーに伴走することもあれば、理事会や事務局といった組織全体に伴走することもあります。NPO支援に限って言えば、活動開始直後の団体にはリーダーに伴走することが多いでしょうし、団体が発展期にある場合は事務局や理事会全体を支援することが多いと思います。伴走の達成目標が人材育成の側面(メンタリングやコーチング、カウンセリング)が強いか、組織基盤整備や強化の側面(アドバイスやコンサルティング)が強いかの違いになると思います。

ブラインドマラソン伴走者から学べること

伴走者で真っ先に思い浮かべるのが、ブラインドマラソン(視覚障害者マラソン)の伴走者なのかもしれません。ブラインドマラソンの伴走者はレースをともに走るだけの存在ではありません。ランナーとタイムや順位などの目標を共有し、応援し、励ますことや不安を取り除くことも重要な役割です。ランナーと信頼関係を築き、常にランナーを観察し、相手に合わせる気配りが必要になります。ランナーをNPOと読み替えれば、この心構えはNPO支援にも共通することだと思います。

NPO支援における伴走型支援は、支援対象の成長や発展に応じた継続的な支援であり、支援対象のニーズにあわせた分野を限定しない横断的な支援になることが多いと思います。伴走型支援は「寄り添い型支援」「傾聴型支援」など複数の名称があります。伴走型支援への姿勢や手法も複数あり、答えはひとつではないと思います。伴走型支援者として駆け出しの身ですので、引き続き経験を積むことで伴走型支援に対する考えを深めていきたいと思います。

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