災害対応段階ごとに考える募金キャンペーンの進め方

災害が発生しても慌てないために、災害時のファンドレイジングについて考えたいと思います。災害への対応は大きく「緊急事態対応」「応急活動」「復旧・復興活動」「災害予防・防災活動」の4つの段階(フェーズ)に分かれると言われているので、この4つフェーズに応じたファンドレイジングを考えてみたいと思います。

緊急事態対応

災害発生から3日間程度は、緊急事態への対応フェーズです。自衛隊や消防、警察、医療人道支援などの専門性の高い非営利団体が中心になって行う「生命や安全の確保」のための活動になります。

緊急事態対応フェーズでのファンドレイジング

緊急事態対応フェーズでは多くの非営利団体にとってできることは限られますが、ファンドレイジングを行う準備は進めることができます。 理事会や事務局内で 、活動地域の被災状況や被災者のニーズに関する情報、被災者支援を行うかどうかの意思決定、被災者支援活動の方針を共有しておくことが重要です。ファンドレイジング担当者は、ウェブサイトや募金チラシ、プレスリリースを作成するために必要な素材の収集といった情報発信の準備をします。

応急活動

緊急事態対応の次のフェーズは、「生活の安定」のための活動で、避難所の運営、避難所への物資配付、被災ガレキの整理や撤去など応急活動になります。災害の規模にもよりますが、3カ月から6カ月程度続きます。

応急活動フェーズでのファンドレイジング

多くの非営利団体はこのフェーズから活動を始めることが多いと思います。災害時に行う緊急救援募金キャンペーンは、通常の募金キャンペーンとは別に独自ページを立ち上げて情報発信するほうが「いますぐに必要とされている緊急救援活動に使われる」というメッセージを明確に伝えることができ、支援者に安心感を与えることができます。緊急救援募金キャンペーンのウェブページや案内メールに必ず書かなればならないことは、「何が起きたのか」「なぜ今、これまで以上に支援が必要なのか」「どのように支援できるのか(募金協力のお願い)」の3点です。緊急救援募金キャンペーンは、まずは会員/マンスリーサポーター/寄付者/ボランティアといった既存支援者を中心に伝えます。

緊急救援募金キャンペーンの開始時点では、被災者支援に関する活動計画は見通せていないことがあります。そのようなときは、活動計画が見通せるようになるまで、ウェブページを頻繁に更新し、更新メールを送るようにします。更新では、募金へのお礼募金がどのような緊急救援活動に役立っているのかを伝えます。

個別の団体で緊急救援募金キャンペーンを開始するのが難しい場合は、複数の団体による合同キャンペーンへの参加を検討しても良いと思います。このような複合的な募金活動は、個々のキャンペーンよりも好意的に捉えられることもあるようです。

復旧・復興活動

復旧・復興活動では、仮設住宅や復興住宅など新しいコミュニティづくりが活動の中心となってきます。3年以上の複数年の中期的な活動になる傾向が高いです。

復旧・復興活動フェーズでのファンドレイジング

復旧・復興活動フェーズは中期的な活動になりますので、多くの場合に被災者支援に関する活動計画はできているはずです。被災者支援に関する活動計画に沿ってファンドレイジング目標を設定し、ファンドレイジングの行動計画を策定します。

応急活動は被災者の生活に短期的・直接的に影響を与える比較的わかりやすい活動ですが、復旧・復興活動の効果や影響を伝えるためにはそれよりは時間の経過が必要となる活動です。応急活動よりは更新頻度は減らしても良いと思いますが、ウェブページやメールの更新は続けてください。新年や新年度、季節の変わり目に加え、計画していた活動がひと区切りしたタイミング、新しい活動が始まるタイミングでは更新が必須です。復興に向けて自ら頑張っている被災した人々の姿(写真)は支援者をひきつけます。募金がどのように使われたのか、これまでに何が達成されたのかなぜ継続的な支援が必要なのか被災地や被災者の将来はどうなるのか(活動の目標やビジョン)とあわせて伝えてください。ファンドレイジグ目標に向けた進捗状況をお知らせするのもいいと思います。

災害からの復興には時間がかかり、報道が減ってしまうと新たな募金を集めるのは難しいかもしれません。それでも、新たな募金をお願いすることを躊躇わずに、繰り返し呼びかけてください。応急活動に募金してくれた支援者が、復旧・復興活動にも募金してくれるかもしれません。

災害予防・防災活動

次の災害に備えるため、今回の災害の教訓を生かすフェーズです。 通常のプログラムに防災の視点を入れ、従来のプログラムの再開します。または、新しく災害予防や防災に関するプログラムが始まります。

災害予防・防災活動フェーズでのファンドレイジング

この段階は災害時や緊急時のファンドレイジグではなく、平時から取り組んでいるファンドレイジングそのものです。万が一の時にすぐに緊急救援募金キャンペーンが開始できるようにオンライン募金システムの導入、会員やマンスリーサポーターの維持・拡大、行政機関や報道機関との良好な関係の構築は重要です。緊急時に迅速な活動をするために、災害のみに使途指定した災害救援復興基金を設置し、ファンドレイジングに取り組んでおくことも考えられます。緊急救援募金キャンペーンに協力してくれた支援者をしっかりと情報管理(名簿化)し、丁寧にコミュニケーションをとることで、他の活動への興味を呼び起こし、団体のファンへ育ててください。

自然の猛威は想定を超えたときにはじめて「災害」となります。支援活動もファンドレイジングも「何かが起きたらどうしよう」ではなく「何が起きても大丈夫」と思えるように、平時から想定し準備しておけば災害ではなくなります。万が一の場合に備えた準備が何よりも大切だと思います。

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