NPOにおける兼任広報の体制づくり

NPOの広報も通常の企業と同じように、取材への対応、報道機関への情報提供、ニュースレターや年次報告書の制作、ブログやSNSのコンテンツ作成、イベントの企画といったように多岐にわたります。ほとんどのNPOは限られた資源で活動しており、職員やボランティアスタッフといった人的資源も例外ではありません。大規模なNPOの中には、専任の広報担当者(または広報チーム)を置いて広報活動に取り組んでいるところもありますが、大多数の非営利団体にはそのような余裕はありません。広報に取り組もうとした場合、兼任で取り組むことになるのが現実的な解決策になります。兼任で広報に取り組むメリットを考えてみたいと思います。

ファンドレイザー×広報

ファンドレイジング担当者(ファンドレイザー)が広報を兼任している団体は多くあります。ファンドレイザーの役割は、資金調達計画の策定、寄付キャンペーンの企画・実施、寄付者・支援者への報告、イベントの企画などです。ファンドレイジングと広報の活動は重複することも多く、兼任することのメリットは多くあります。しかし、NPOにおける広報は、ファンドレイジング(お金集め)以外にも様々な役割があります。ボランティアの募集や市民に対する啓発、アドボカシー活動などすぐにファンドレイジングにつながらない活動が後回しになりがちです。

総務×広報

総務は、郵送物の発送・仕分けや機器・備品管理から、福利厚生業務、なかには人事や経理まで多岐にわたって団体を支える役割があります。総務は業務上事務局内のすべての部門・担当者との関わるため、広報の素材を集めやすいというメリットがあります。また、総会や理事会に関する業務を行うことも多く、事務局外のネットワークも生かせます。一方、総務は、他が担当しない業務を請け負う何でも屋という側面があり、広報を他にできるスタッフがいないからという消極的な理由で担当になる場合もあるようです。

事務局長×広報

「事務局長 兼 広報」という肩書はそれほどみませんが、結果的に事務局長が広報を兼任している場合があります。事務局長の役割は、組織運営のあらゆる側面に関与し、非営利団体内のすべての部門で行われる仕事を監督することです。理事(理事会)や部門責任者と連携し、素早い意思決定がこの兼任のメリットです。ただ、広報を兼任することでプレーイング・マネジャーになるわけですが、どうしてもマネジャーとしての役割が多く実務が後手になりがちです。

事業担当者×広報

現場のプログラム・マネージャーやソーシャル・ワーカーなど事業担当者が広報を兼任することも考えられます。NPOのなかでも開発プログラムの実施や対人支援業務に取り組む最も重要なポジションです。支援業務だけでなく、プログラムの予算管理や進ちょく管理、チームスタッフのマネジメント、理事会や事務局長への報告なども含まれます。最新情報は常に現場にあり、情報量が多いのが、現場担当者が広報を兼任する最大のメリットになります。事業担当者が広報を兼任することが理想ではありますが、業務量や本来業務とのバランスからなかなか現実的ではありません。

理事×広報

正確には兼任体制とは言えませんが、理事に広報担当を設けることも可能です。理事は、理念の浸透、戦略の策定、ガバナンス、財務の健全化などに責任を負っています。広報も理事の役割のひとつに加えることで、理事会での広報に関する議論が活発になり、組織全体で広報に取り組めるようになるメリットがあります。しかし、理事は非常勤のボランティアであるケースが多いため、理事が戦略は策定できても、事務局が戦略を遂行することになったり、継続性・持続可能性に課題があったりします。

特に小規模NPOであると、担当者個人のパフォーマンスが組織のパフォーマンスに直結します。これはやりがいである一方で、とても大きなプレッシャーになります。NPOは、広報担当者だけが広報に取り組むのではなく、役職にかかわらずすべてのスタッフを広報担当者と見なして活動することも重要です。事務局長、事業担当者、ファンドレイザー、理事が参加する広報会議を行い、社会に共有すべき話題が適切に発信されているかどうかを会議で確認しながら広報に取り組んでみてください。

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