NPOの理事は、会員(社員)から法人の業務遂行を委任された役員です。業務を執行する権限(業務執行権)があります。そのため、善良な管理者の注意をもって委任された業務を執行する責任(善管注意義務)、法令や定款、社員総会の決議などに従って法人の業務を執行する責任(忠実義務)があるとされます。そのほかにも、利益相反行為の禁止や損害を賠償する責任、競業避止義務も課せられることがあります。このような責任があるNPOの理事に求められることは何か考えてみたいと思います。
NPOの理事に求められること
責任を果たす準備をする
理事としての責任を果たすためにも、関連法令や法人の定款と規定類を読み込んでおく必要があります。さらに、法人の使命、目標、戦略、歴史や経緯について知識を持ち、法人の財務や運営について把握しておく準備が必要です。
理事会に出席する
理事会が設置されているNPOでは、理事会は少なくとも年1回は開催されているはずです。理事会を効果的な統治機関にするために、それ以上の頻度で開催している法人が多いと思います。理事は、すべての理事会に出席し、経験や専門知識を活かして議論や意思決定に積極的に参加することが求められます。
資金調達を支援する
理事は、法人が使命や目標を達成するためのリソースを得られるように、寄付者や協賛企業の発掘・紹介、助成金の申請サポートなど、資金調達を積極的に支援することが求められます。ときには自ら寄付をすることも考えなければなりません。
説明責任を果たす
理事は、法人が法的・倫理的基準を遵守して運営されていることを確認し、法人の運営と財務について透明性の高い姿勢を保ち続けるために法人内部と法人外部ともに説明責任を果たすことが求められます。特に、外部へは法人の組織文化、戦略、活動成果、財務の健全性などを発信するサンバサダーとしての役割を担います。
ステークホルダーと関わる
理事は、スタッフ、ボランティア、寄付者、受益者の人々など、法人のステークホルダーと関わることが求められます。理事は法人の日々の活動には直接関与することが少ないため、ステークホルダーと意識的に関わることが必要です。ステークホルダーが抱く懸念や意見に耳を傾け、法人の使命を支える関係性の構築に努めることも含まれます。
理事会は、マネジメント機関ではなくガバナンス機関です。マネジメントは法人の日々の運営を対象とする一方で、ガバナンスは法人の運営を示す規則や原則(中長期計画や全体方針も含みます)、その運用を対象とします。NPOは、複数の人々が意思決定に関与することで、優れたガバナンスを発揮します。理事会に出席や表決もせずに業務執行も担当しない「名ばかり理事」がいることはNPOにとって不幸でしかありません。新任理事へのオリエンテーション内容のひとつとして参考にしてください。