シリーズ 定款を読む(1) 「NPO法人の社員総会」

定款は、その法人の憲法とも言われ、法人の根本原則を定めた最高法規に当たります。ただ、NPO法人の運営・管理については、法律による縛りが少なく機関設計・業務執行はNPO法人の自治に委ねられています。定款に基づいた自治が求められるわけですが、定款そのものをじっくりと読む機会はそれほど多くないのではないかと思います。ましてや他のNPO法人と比較して読むこともないと思います。今回の記事では、50のNPO法人の定款を「社員総会」について読み比べてみました。NPO法人によって、 どのような違いがあるのかを確認してみましょう。

特定非営利活動促進法(NPO法)上、NPO法人に必要な機関は「社員総会」「3人以上の理事」「1人以上の監事」です。社員総会は、NPO法人の正会員(NPO法上の「社員」)が表決権を行使することで意思決定を行う機関です。定款で理事その他の役員に委任したものを除きすべて社員総会の決議によることとされています。

社員総会の種別

NPO法で明記されている社員総会の種類は、通常社員総会(通常総会)臨時社員総会(臨時総会)です。私が調べたNPO法人50団体のうち1団体が、「定例総会」(=通常総会)、「臨時総会」「特別総会」の3種を規定していました。特別総会の議案は、「定款の変更」と「解散および合併」と明記されています。

社員総会の権能

法定の総会議決事項は、「定款の変更」「解散」「合併」の3つのみで、定款で理事その他の役員に委任することができます。50団体のうち1団体が「総会は、特定非営利活動促進法及びこの定款に規定するもののほか、理事会が総会に付すべき事項として議決したことを議決する」としていました。しかし、法または定款の他の条文で規定されている社員総会の議決事項についても、社員総会の職能として改めて列挙することで社員(正会員)からみて法人の意思決定ルールを明確に示すことにもなるため、多くの団体が議決事項を列挙しています。団体が列挙している法定以外の総会議決事項を見てみたいと思います。

事業報告および決算の承認

50団体のうち46団体が「事業報告および決算の承認」を社員総会の議決事項としています。

事業計画および予算の承認

多くの団体が「事業報告および決算の承認」を社員総会の議決事項としている一方で、「事業計画および予算の承認」を社員総会の議決事項としている団体は、22団体と半数以下になっています。

事業計画および予算の変更

「事業計画および予算の変更」を社員総会の議決事項としている団体は、さらに少なく50団体のうち13団体になっています。

役員の選任および解任

「役員の選任および解任」を社員総会の議決事項としている団体は、50団体のうち45団体です。ただし、すべての役員の選任と解任を議決事項にせず、細かく記載している団体があります。45団体のうち「役員の選任および監事の解任」が3団体、「役員の選任」が2団体、「監事の選任および解任」が2団体、「監事の解任」が2団体、「役員の解任」が1団体、「理事の承認、監事の選任、役員の解任」が1団体となっています。50団体のうち、5団体は役員の選任および解任を理事会の権能にしています。

役員の職務および報酬

50団体のうち23団体が「役員の職務および報酬」を社員総会の議決事項としています。「役員の選任および解任」と同様に細かく指定している団体があります。23団体のうち、「役員の職務」が3団体、「役員の報酬」が1団体、「監事の職務および報酬」が1団体です。

入会金および会費の額

「入会金および会費の額」を社員総会の議決事項としているNPO法人は、50団体のうち21団体でした。もちろん入会金がない団体は「会費(もしくは年会費)の額」が議決項目です(8団体ありました)。会費の中でも「正会員の会費の額」だけを総会議決事項にしている団体が1団体ありました。また、会費以外も議決事項にしている団体があり、「会費の額、種類、納入時期」「会費の額および会員の種類等」としている団体が1団体ずつあります。

会員の除名

50団体のうち14団体が「会員の除名」を社員総会の議決事項にしています。

解散における残余財産の帰属

「解散における残余財産の帰属」を社員総会の議決事項にしているNPO法人は、50団体のうち15団体でした。

借入金(長期借入金)

所轄庁が公開しているモデル定款では「借入金(その事業年度内の収益をもって償還する短期借入金を除く)その他新たな義務の負担及び権利の放棄」が社員総会の議決事項に入っている場合があります。今回調べたNPO法人50団体のうち、この議決事項があったのは、11団体です。

理事会から付議された事項

社員総会の議決事項として「理事会から付議された事項」を明記している団体は、50団体のうち14団体ありました。「理事会から付議された事項」と「事務局の組織および運営」、「理事会から付議された事項」と「その他運営に関する重要事項」を同時に議決事項にしている団体はありませんでした。

事務局の組織および運営

「事務局の組織および運営」を社員総会の議決事項にしている団体は、50団体のうち8団体です。「事務局の組織および運営」と「その他運営に関する重要事項」を同時に議決事項にしている団体はありません。

その他運営に関する重要事項

「その他運営に関する重要事項」を社員総会の議決事項にしている団体は、50団体のうち31団体です。「理事会から付議された事項」「事務局の組織および運営」「その他運営に関する重要事項」に大きな違いはないと考えられます。

上記以外の議決事項

上記以外の議決事項として、「資産の管理の方法」(3団体)、「中期または長期にわたって行う事業の計画」(2団体)、「支部の設立および廃止」(1団体)があります。議決事項ではありませんが、社員総会での報告事項を記載している団体が2団体ありました。

社員総会の開催

NPO法では、少なくとも毎年一回、通常社員総会を開かなければならないとされています。私が調べたNPO法人50団体のうち2団体が、定款で通常総会を2回開催と記載していました。開催時期については50団体のうち11団体が「事業年度(会計年度)終了後3カ月以内」、2団体が「事業年度開始から3カ月以内」、1団体が「会計年度終了後80日以内」としています。それ以外の団体には開催時期の記載はありません。

社員総会の招集

NPO法では、社員総会の招集の通知はその社員総会の日より少なくとも5日前に行われることとなっています。50団体のうち、「5日前」(明記なしも含む)としている団体は34団体です。「7日間前」/「1週間前」は9団体、「10日前」は2団体、「14日前」/「2週間前」は3団体、「20日前」は1団体、「6週間前」は1団体です。

社員総会の定足数

NPO法には社員総会の定足数に関する規定はありませんが、今回調べたNPO法人すべてに定款に社員総会の定足数の記載がありました。ただし、その内容は団体により異なります。最多が「社員(正会員)総数の2分の1以上の出席」で29団体です。「過半数の出席」が4団体、「3分の1以上の出席」が7団体、「4分の1以上の出席」が1団体、「5分の1以上の出席」が7団体、「6分の1以上の出席」が1団体、「10分の1の出席」が1団体です。

他のNPO法人と比較することで、はじめて自分の団体の定款が他の団体とどこが違うか把握できます。NPO法人の定款はどれも同じように見えて、細部は少しずつ異なります。その少しの違いが団体運営の違いや団体運営の特徴につながってきていると思います。改めて定款を読んでみましょう。

<シリーズ定款を読む>は、50のNPO法人の定款を「社員総会」「役員」「理事会」「事務局」「会員」の視点から読み比べてみる企画です。

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