NPOの広報活動では、事業やイベントなどに「参加してほしい対象」とチラシやウェブサイトなどで「情報を伝えたい対象」が一致しないことがあります。このことが理解できると、イベントの企画趣旨をそのまま広報に活かすことが最善ではないということがわかります。
小学生向けのイベントの場合
夏休みや冬休みなど長期の休みに小学生や中学生を対象にしたイベントを企画するNPOも多いのではないでしょうか。この場合、伝えたい対象を小学生や中学生にするのが一般的だと考えられます。しかし、小学生や中学生の参加の背景(理由)を確認すると、「親に勧められて参加した」「先生に勧められて参加した」という回答が多いことがよくあります。つまり、イベントに参加してほしい対象は子どもですが、このイベントを伝えなければならい人、イベントを知ってほしい人は実は子どもたちの周りにいる、保護者や先生といったおとなになります。
「参加者」と「読者(広報対象者)」を分けて考える
「参加してほしい対象」と「情報を伝えたい対象」を分けて考えると、広報の計画・実施に違いが出てきます。子どもを対象にすると「遊び心のある」「楽しい」「仲間が増える」といったキーワードでチラシをつくることになります。一方で、周囲のおとなをターゲットにした場合、その団体は信頼できるか、自分の子どもや生徒を安心して託せる団体か、子どもにとってどのような学びがあるのか、と言った視点で広報物を見るため、信頼や安心を伝えるものになってきます。チラシであれば、フォントはゴシック体ではなく明朝体を使ったほうが良くなります。SNSやウェブサイトなどチラシ以外の方法も考えなければなりません。記載情報もイベント概要だけでなく団体概要などもしっかり伝えたほうがよくなります。報道機関への働きかけも、小学生新聞や中学生新聞といった子ども新聞ではなく、全国紙や地方紙の教育面が対象になります。
「伝わる」とは「行動に結びつく」
「情報を伝えたい対象」を絞り込んで具体的に思い浮かべることで伝える内容や量、伝え方が決まり、伝わる情報、つまり人を行動させる情報になるのです。「情報を伝えたい対象」を限定しても、「参加してほしい対象」や「行動してほしい人」を制限することにはなりません。子ども向けのイベントに限らず、子ども食堂や遊び場といった事業の広報、高齢者向けの施設の広報などでも活かせると思いますので、一度、振り返ってみるのも良いと思います。