広報についてNPOは企業の活動から学ぶべきことがたくさんあります。しかし、企業とNPOの違いもあります。違いを知っておくことでより適切な学びを得ることができます。企業の広報とNPOの広報の違いを考えてみたいと思います。
顧客の利益 vs 社会の利益
企業もNPOも理念を実現するために活動しています。しかし、企業は「顧客にもたらす利益に焦点を当てた理念」であるのに対し、NPOは個人を超えてより広範に「社会にもたらす利益に焦点を当てた理念」となっています。つまり、NPOは社会的な価値や目的を理念にしています。ただ、企業が社会的な価値や目的を無視しているわけではありません。SDGs経営やESG経営といった言葉に代表されるように企業にも社会的な価値や目的を持つことが期待されるようになってきています。
組織のビジョン vs 社会のビジョン
理念に違いがあるからこそ、ビジョンにも違いがあります。企業が掲げるビジョンは「組織の未来像」であることが多く、NPOのビジョンは「社会の未来像」になっています。同じビジョンという言葉を使っていても、示していることが異なっていることに注意が必要です。
顧客・投資家 vs 寄付者・ボランティア
ステークホルダーは利害関係者と日本語で訳されますが、より丁寧に説明すると「組織がその支援なしには存続できなくなるような人々」となります。企業は一般的に顧客や投資家とったステークホルダーに関心を寄せるのに対し、NPOは寄付者やボランティアといったステークホルダーに関心を寄せます。寄付者やボランティアは企業にはないステークホルダーです。ただし、企業もNPOも、国や自治体、従業員、報道機関、地域社会など多くのステークホルダーと良好な関係を築き、維持しなければならないことは共通しています。
売上 vs 寄付・助成金
企業の収入源は売上である一方、NPOの収入源は寄付や助成金に依存することが多くなります。寄付や助成金は受益者を支援する活動のための資金であり、広報などの組織運営に使える予算は自然と限られることになります。
商品・サービス vs ストーリー
企業は商品やサービスを広報します。商品やサービスを広報することで、売上の拡大につなげます。商品やサービスを広報することが、投資家の期待を高めることにつながります。一方、NPOが広報する内容はストーリーです。NPOの活動には受益者、ソーシャルワーカー、寄付者、ボランティアといった人々が必ず関わります。そのような人々に関する、共有する価値のあるストーリーを広報することで、ストーリーを読む人の感情を動かし、寄付やボランティアといった行動につなげます。
企業とNPOとでは、プレスリリース、ウェブサイト、ソーシャルメディア、ダイレクトメール、イベントなど手法は共通しています。より多くの人たちに知ってほしいという広報活動の動機も同じです。ここに挙げた違いがすべてはないと思いますが、広報活動を理解する手助けになればと思います。