NPOのファンドレイザーがやってはいけない6つのこと

NPOでファンドレイジング(資金調達)を担当しているスタッフをファンドレイザーと言います。日本ファンドレイジング協会が発表しているように、ファンドレイザーには行動基準(倫理)があります。今回は、それとは異なる視点でファンドレイザーがやってはいけないことをまとめてみました。

日本ファンドレイジング協会「ファンドレイジング行動基準」

1. 支援者にお金だけを要求する

ファンドレイジングを「フレンドレイジング」や「ファン度レイジング」と呼ぶ人もいます。ファンドレイザーは、お金を集めるだけの役割ではなく、フレンド(友達)を増やす(フレンドレイザー)、ファン度を高める(ファン度レイザー)といった役割もあります。ファンドレイジングは、特定の価値観を持っている支援者と、その価値観を実践するNPOをつなぐことです。ボランティアであればお金がなくても社会に貢献することができます。寄付(お金)ではなく支援者(人)に焦点を当てて考えましょう。ファンドレイザーは支援者のお金にしか興味がないと思われてしまうと信頼関係は築けません。

2. 寄付者のフォローを怠る

プレゼントをもらったり、何か助けてもらったりしたら、お礼をするのはマナーです。同様に、寄付を受領したらお礼することはファンドレイザーにとって当たり前の活動です。コストを抑えるという理由でお礼のメールを送らないということはあり得ません。お礼のメールは48時間以内に送るようにしましょう。寄付者には常に最新の情報を提供することを忘れてはいけません。寄付者と連絡を取り合い、寄付に対する感謝の気持ちを伝えることで、寄付者との関係を深めましょう。寄付者がいなくなるたびに新しい寄付者を探すよりも、いまの寄付者を満足させる方がはるかに大切です。

3. すぐに新しい寄付をお願いする

すぐに新しい寄付をお願いすることは、プレゼントを贈られてもお礼をせずに次のプレゼントを要求するようなものです。お礼だけでなく「おいしくいただきました」とか「大変重宝しています」などプレゼントの感想も贈り主に伝えると思います。寄付も同じです。すぐに追加の寄付を求めると、寄付者に十分な貢献をしていない(役に立っていない)と暗に伝えてしまうことになりかねません。初めての寄付者には、「誰もが私たちのNPOへの寄付を選ぶわけではなくあなたは特別で重要な存在だ」という歓迎の気持ちを伝えることをおすすめします。団体の活動紹介や報告書とともに、質問があるときに使える電話番号やメールアドレスを寄付者に伝え、いつでも寄付者とコミュニケーションをとれるようにしておいてください。寄付者とコミュニケーションを何度か行って、団体の理念や活動を理解してもらってから次の寄付をお願いしても遅くはありません。

4. 寄付額を白紙委任する

親や友人からお金を借りるときに「いくらでもいい」と言う白紙委任をすることはありません。自分から必要な額を伝えるはずです。寄付をお願いする際には、活動を行うために必要な金額を具体的に提案するのが理想です。誰から見てもベストな提案額はありません。提案額を高く設定すると、より低い金額が提案されていたら参加していたかもしれない人たちが寄付をしなくなる可能性があります。逆に、低い金額を設定すると、少額の寄付でよいと思われるため参加者が増えます。一方で、もっと寄付できたはずの人が寄付を減らしてしまうかもしれません。提案額をいくらにするかがファンドレイザーの腕の見せ所です。NPOによってベストな金額は異なるため、最初は依頼額を低く設定し、ファンドレイジングの結果が悪くなるまで徐々に依頼額を増やしていくというテストを繰り返してベストな金額を探る以外に方法はありません。

5. ひとつの財源に依存する

一本足の椅子に座るのは、精神的にも肉体的にも疲れます。最終的には倒れてしまいます。NPOのファンドレイジングも同じで、ひとつの財源に頼っていると精神的にも肉体的にも疲れて、行き詰ってしまいます。NPOの資金を1人の寄付者、1つの助成金、1つの収入源に依存してはいけません。もしその財源がなくなってしまったら、非常に厳しい状況に陥ってしまいます。財源をひとつに依存していると、活動報告の公開や説明責任などNPOにとって大切な活動がおろそかになりがちです。財源を多様化させることはファンドレイザーの仕事のひとつです。

6. 管理費が少ないことを自慢する

管理費が少ないことを誇張するのはあまり感心しません。たとえば、物資を配布する事業を行っている場合、寄付をなるべく物資購入に充てることを寄付者は期待しています。しかし、物資には、足もなければ、口もありません。誰かが購入し、仕分けし、運び、保管し、受益者に手渡しています。必ず人が介在します。人件費がそのまま管理費になるわけではありませんが、管理費は必ず必要になります。継続した事業であれば、なおさら管理費がゼロということは考えられません。管理費が少ないことを自慢するのではなく、管理費の透明性を保つことがファンドレイザーに求められます。プログラム評価に関する経費など、今後さらに管理費を必要とする場面が増えると思います。管理費は投資であることを寄付者に伝えなければなりません。寄付者にアピールするべき点は管理費の少なさ以外にもたくさんあるはずです。

ファンドレイジングは、マネーレイジングではありません。ファンドレイザーは、単に現金(マネー)を集めるのではなく、NPOが使途を管理する意味のある資金(ファンド)を集めることが仕事です。ファンドレイザーにとって大切な価値観のひとつは、資金を通じてNPOへの参加や協力を増やすことではないでしょうか。

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