NPOの会員制度について考える

会員は、ファンドレイジング手法のひとつとしてだけでなく、団体を支える支援者として特に重要です。正会員(特定非営利活動促進法上の「社員」)は財政的な支援にとどまらず、会員総会で議決権を持つことで団体の方向性を決め、運営を担う意思決定者です。

 一方で、正会員だけが多くなると、会員総会を開催するだけでも出席者や書面表決の確保で非常に大変な思いをします。定款で正会員しか会員種別を定めていないと、結果的に会員入会の呼びかけを躊躇せざるを得ないことにもなります。NPO法人はどのような会員を設定しているのか調べてみました。賛助会員の事例には、公益財団法人の事例も含まれています。

正会員

会員総会で議決権を持つ、一般には正会員と呼ばれる会員種別も、NPOによっては「運営会員」と名付けています。これは、NPOの制度やガバナンスに詳しくない市民にとって分かりやすくする工夫だと思います。正会員の会費は10,000~12,000円の年会費が多いようです。また、年会費のほかに、入会金を設けている団体もあります。

正会員以外の会員(賛助会員)

多くのNPOが、会員総会で議決権を有しない会員を設けています。名称として多いのが「賛助会員」です。賛助会員のほか、「サポート会員」「ファンクラブ会員」「準会員」「准会員」「応援団」「助成会員」などがありました。また、「フレンズ」「あかはな会員」「子犬会員/親犬会員」「パイナップル会員/バナナ会員/マンゴ会員/ココナッツ会員」「にっこり応援会員/ひとり立ち応援会員」といったオリジナリティある会員名称を付けている団体もあります。正会員を運営会員と名付けている団体は、賛助会員の名称を「支援会員」としている団体が多いようです。

個人を対象にした賛助会員の会費は3,000円~6,000円程度が年会費のボリュームゾーンとなっています。認定NPO法人のなかには賛助会費を税の優遇措置の対象にしている団体もありますが、すべての認定NPO法人が賛助会費を税の優遇措置の対象にしているわけではありません。

その他の会員

正会員ではないため賛助会員に該当しますが、特徴的な会員種別(会員名称)をいくつか紹介したいと思います。

医療支援を行うNPOは、一般会員より会費が高く設定された「医師会員」や医療従事者向け会費を設けている団体があります。難病やアレルギー支援をする団体は、一般会員(賛助会員)とは別に、患者とその家族を対象にした「患者会員」を設けている団体がありました。環境系の団体に多く見られたのですが、家族単位で会員になる「ファミリー会員(家族会員)」を持っている団体もあります。

それ以外にも、時間や労力を提供する「ボランティア会員」やサービス利用者向けの「利用会員」、ニュースレターを購読するための「協力会員」、まとまった会費を一括で納めることでなれる「終身会員」「生涯会員」を設定している団体もありました。

正会員・賛助会員ともに、会費を安く抑えた「子ども会員」「ジュニア会員」「学生会員」「ユース会員」を設定している団体があります。また、個人だけではなく「特別会員」や「法人会員」といったように企業や団体の会員を募集しているNPOは多数ありました。

まとめ

会員制度を持っている組織は、NPO法人や財団法人といった非営利団体に限りません。たとえば、スポーツ・ジム。いつでも使える「レギュラー会員」のほかにも、平日夜だけ使える「ナイト会員」や土日・祝日だけの「ホリデー会員」といった会員を設定しています。

また、プロスポーツのファンクラブは、初めてファンクラブに入る人向けの「スタート会員」やスタジアムやアリーナでの観戦頻度に合わせた会員に加え、世代や性別による「ジュニア(キッズ)会員」「レディース会員」「シニア会員」が用意されていることもあります。NPO法人で導入することは難しいですが、募集定員がある会員種別もあります。スポーツ・ジムやプロスポーツでは、ライフサイクルやライフステージに応じた会員種別がつくられています。非営利団体の会員制度を考える際に参考にできる点があると思います。

特定利非営利活動法人(NPO法人)は、会員の種別や名称を定款で自由に決めることができます。定款は法人の組織や運営に関する規則をまとめた文書で、団体の憲法みたいなものです。そこには寄付者について触れられることはなくても、会員については記載されています。繰り返しになりますが、会員は財政的な支援者以上の重要なステークホルダーです。定款の変更は骨が折れる作業ではありますが、ぜひご自身の団体にあった会員種別や会員名称を考えてみてください。

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