NPOのデジタル化を考える

多くのNPOには、人材や財政が限られるという制約が常につきまといます。その制約を乗り越える方法のひとつがデジタル化です。NPOにおけるデジタル化の必要性は新型コロナウイルスの感染拡大前から言われていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によってさらにクローズアップされるようになりました。NPOのデジタル化について、考えてみたいと思います。

デジタル化の3分類

デジタル化といっても大きく3つに分類できると思っています。

データのデジタル化

データのデジタル化とは、これまで紙で保存していたデータをデジタル化することを指します。データをデジタル化することで、どこからでも情報にアクセスできるようになります。

業務プロセスのデジタル化

これまでの業務プロセスをデジタル化することで、管理業務に時間をかけなくて済むようになります。手動でやっていた作業を自動化することも含まれます。ただ、業務プロセスのデジタル化は部門内で完結してしまうことが多いようです。

ビジネスモデル・組織運営のデジタル化

ビジネスモデルや組織運営のデジタル化は、部門間の壁を取り払い、組織全体のデジタルデータとシステムを統合することです。データとシステムを統合することで組織変革や新しい価値の創出につなげます。

NPOのデジタル化領域

NPOにおけるデジタル化で重要な領域は3つあります。コスト削減や効率の良い意思決定、しなやかで強い組織基盤、ビジョン・ミッションの実現につなげることができます。

ファンドレイジング領域

NPOの中で、ファンドレイジング領域はいち早くデジタル化に対応してきた領域といえます。オンライン決済システム、支援者管理システムなどがその代表例です。オンライン決済と支援者管理システムをつなげることで、データ収集とデータ管理のコストが大幅に削減できます。ファンドレイジング活動のパフォーマンスの確認と分析が容易になれば、より良い意思決定ができるようになります。

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コミュニケーション領域

コミュニケーションのデジタル化によって、ステークホルダーとのより良いコミュニケーションが実現します。NPOにとっての重要なステークホルダーは受益者、支援者、職員です。理事を含む職員同士のコミュニケーションがデジタル化で容易になれば、意思決定がより明確かつ効率的になります。リモートワークといった新しい労働環境を整えることもできます。受益者や支援者とオンラインによるミーティングやセミナーを行うことで、より安価により多くの人々とコミュニケーションがとれるようになります。

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サービス提供領域

デジタル化によって、遠隔地でのサービス提供など、より多くの受益者にサービスやプログラムを提供できるようになりました。特に、教育や相談などの支援活動を行うNPOは、コストを最小限に抑えることができます。今後は、デジタル化されたサービスやプログラムを持続可能にしていく段階に入っていきます。デジタル化によって、活動地を広げ、継続した支援を提供することは、ビジョンやミッションの実現を加速することにつながります。

NPOのデジタル化の注意点

NPOがデジタル化を進めるうえで注意しておきたいことを4つあげてみました。

デジタル・デバイド(デジタル格差)

デジタル・デバイドは、デジタル化を進める多くのNPOに考えてほしいことです。NPOの受益者の中には、デジタルにアクセスできない人がいることを常に考えておかなければなりません。デジタルにアクセスできない人こそ支援が必要な受益者かもしれません。あえてこれまでとおりのサービス提供を維持することが良いこともあります。

車輪の再発明をしない

車輪の再発明とは、確立されている技術や解決法を改めて最初から作ることを指します。あなたのNPOが直面しているデジタル化をする上での課題は、すでに他のNPOが経験し、解決してきたかもしれません。同じ地域のNPOや同じ社会問題に取り組んでいるNPOに聞いてみてもいいと思います。

職員のスキルアップ

新型コロナウイルスの感染拡大で多くのNPOの運営方法が変化しました。おそらくその変化は新型コロナウイルスの感染拡大前に戻りませんし、止まりません。引き続きNPOは適切なデジタルツールを導入して、効果的に活用していくことになります。デジタルツールを最大限に活用していくために職員がスキルアップできる場を用意する必要があります。

パートナーシップでデジタル化に取り組む

多くのNPOは、デジタル化のための十分な財源がありません。自分たちのNPOに必要なデジタル化を実践するために、企業とのパートナーシップも検討する必要があります。これまで、NPOが企業とのパートナーシップを組む目的は、財源の確保、認知度の向上、新しいボランティアの獲得でした。いまでは、デジタル化を目的に企業とパートナーシップを組めるようになってきています。デジタル化を支援する企業の中には、NPO向けに無料や割引価格でデジタルツールを提供しています。

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NPOにとって、デジタル化はもはや「やれたらいい」という選択的な戦略ではなく、「やらなければならない」という生き残りのための戦略になっていくかもしれません。