NPO中期計画 策定のポイント

NPOにはビジョンとミッションによる超長期計画があります。ビジョンは実現までに何十年とかかる大胆な目標です。ミッションはビジョンを実現するための行動方針です。超長期計画と短期計画(年間計画)を策定しているNPOは多い一方で、その中間にあたる中期計画を策定している団体は少数だと思います。中期計画を策定するにあたってのポイントをご紹介します。

短期計画と中期計画の違い

短期計画は1年ごとの年間計画で、月単位の行動スケジュールまで細かくすることもあります。一方、中期計画は3~5年間の計画です。時間軸以上に大きな違いは、短期計画は「やりたいこと」を列挙するTo do型(オペレーション型)を重視した計画であるのに対し、中期計画は「将来のありたい姿」を重視したTo be型(ビジョン型)の計画である点です。このため、中期計画を中期ビジョンと呼んでいるNPOがあります。

中期計画の基本的な枠組み

中期計画に記載しておいたほうがよい項目を示してみたいと思います。これにこだわる必要はありませんが、参考にしてください。

NPOの目的・目標

中期計画を策定するうえで、NPOが目指す社会や解決しようとしている社会問題、それをどのように実現するかというミッションを明確にしておきます。これまでの活動を振り返り、評価します。

現状認識

NPOを取り巻く社会環境を記載します。社会環境には、受益者、支援者、同じ活動を行う他のNPOや企業、行政の施策や法制度などが含まれます。NPOがいまの社会をどのように見ているのかを伝える重要なパートになります。

達成目標

中期計画で対象にする期間(3年後や5年後)の具体的な到達地点を書きます。時系列によってNPOの目的・目標を分解するイメージです。ポイントとなるのは、達成度が測定できるように具体的にしておくことです。

重点課題

現状認識と達成目標にはギャップがあるはずです。そのギャップを埋める上での課題を書きだし、優先順位を付けます。事業による社会の変化だけでなく、事業を支える人材やチームといった組織面や財務面の課題も書きます。

重点課題を解決するための実行計画

重点課題を解決するためのアクションプランを書きます。年間計画でも考えるため、中期計画では「何を実行するか」「誰が実行するか」「いつまでに実行するか」の概略でも構いません。

中期計画策定の勘所

適切な策定委員を選ぶ

理事と職員だけでなく、会員やボランティアなども加えて策定したほうが多様な視点で中期計画を策定できます。必ず一人はNPOがおかれている環境を熟知している人をメンバーに加えておきましょう。また、中期計画策定プロセスが次世代の担い手の育成にもなります。積極的に若手を策定委員にするといいと思います。

十分な時間を使う

ビジョンとミッションの振り返りやこれまでの活動の評価から始めると、中期計画の策定には想像以上の時間がかかります。理事会や社員総会の時期も考慮に入れると、中期計画の完成まで1年くらいかかることがあります。

定期的なモニタリングを行う

中期計画に基づく目標の達成状況や実行計画の進ちょくについて、定期的に把握し、目標の修正や実行計画の改善を行ってください。あらかじめ「重点課題を解決するための実行計画」にモニタリングの日程を組み込んでおくのが理想です。

これまでは過去は未来を予測するのに適していました。しかし、今では過去の経験から未来を予測することは限りなく困難になっていると言ってもいいと思います。そのようなときに必要な姿勢は「計画を立てて、それを守る」という従来のアプローチではなく「方向性を決めて、それを検証する」というアプローチだと思います。つねに受益者や地域社会を念頭に置き、柔軟に計画を変化・進化させていってください。

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