年次報告書(アニュアルレポート)をつくろう

年度末が迫り、多くの団体が今年度の振り返りと次年度の計画策定を進めていると思います。今回は自らの団体を社会に公開して支援者に伝える「年次報告書(アニュアルレポート)」作成のポイントをご紹介します。活動の成果を見せることで、団体の信用と透明度を高めることにつながります。効果的に活用できれば、既存の支援者を維持し、新しい支援者を獲得することにつながります。

読者や目的を明確にする

年次報告書は、行政に提出する事業報告書や財務諸表とは別に作成することが多くなります。そのため、年次報告書の読者や発行する目的を事前に明確にしておく必要があります。想定する読者は、個人寄付者、協働する企業、会員、報道機関、当事者(プログラムの参加者)、有給・無給・ボランティアを問わずスタッフなどが考えられます。また、目的は「説明責任を果たす」「透明性を高める」「団体の活動を『見える化』する」「ステークホルダーとのビジョンやミッションを共有する」「新規の支援者を獲得する」などがあります。

団体名と報告対象年

言わずもがなではありますが、年次報告書の団体名と報告対象年は誰もが簡単に見つけられる場所に記載しておきましょう。多くの団体では、中面だけでなく表紙に団体名と年次を記載しています。

理念を明記する

年次報告書は、ミッションやビジョン達成に向けた年間の進捗状況をまとめた報告書と言えます。毎年、継続して発行することで、ミッションやビジョンをどのように実現しようとしているのかの事例集となります。会員や寄付者といった支援者は私たちが思っているほど、ミッションに関心がない、知られていないかもしれません。

「活動」ではなく「成果」を強調する

「この活動をした」「あの活動した」だけでなく、財政的な支援によってどのように変化を生み出したか、成果を強調する書き方を検討してください。活動回数や時間、受益者数、ボランティア数といった数値で示すこともできますが、ひとつの活動やひとりの受益者にフォーカスして、ストーリー(物語)形式で成果を示すこともできます。

「読ませる」でなく「見せる」

文字が多すぎると、年次報告書を読むのが難しくなるか、面白くないものになってしまいます。伝えるためには「見せる」という視点で検討してください。写真は、団体オリジナルの報告書を作成するために、とても重要な要素になります。また、インフォグラフィックスのように数値がデザインされていると人をひきつける要素になります。良い写真が見当たらない場合は、団体のソーシャルメディアを見返すとヒントが見つかります。

会計セクションは短く簡潔で良い

非営利団体の年次報告書を手にする人は、必ずしも会計や財務に詳しい人ではありません。会計・財務のページにすべてを記載するのではなく、団体のお金がどこから来たのか、そして何のために使ったのかが説明できればいいと考えます。会計・財務を「見せる」ために、複数年の推移を示す折れ線グラフや内訳を示す円グラフ、推移と内訳を同時に表現できる棒グラフなどグラフを使用して、わかりやすさを目指してください。

ウェブサイトとの連動

はじめて年次報告書を作成する場合、ページ数に悩むかもしれません。多くの団体が32~40ページ程度で作成しているようです。予算の関係で16ページにする必要があるかもしれません。紙の年次報告書だけでは、すべてを掲載することができません。紙でカバーしきれない内容はウェブサイトに掲載しておきましょう。また、ウェブサイトは紙では実現できない、動画(ビデオ)などを活用できます。たとえば、代表者のメッセージなどで活用できます。もちろんウェブサイトには年次報告書のPDF掲載を忘れずに。

次年度に向けた行動を促す呼びかけ

年次報告書の冒頭では1年間活動に関して支援者に感謝することを忘れてはなりませんが、ぜひ報告書の末尾にあたるページでは来年に向けた行動を促す呼びかけをしてみてください。1年の終わりは、次の年の始まりです。寄付キャンペーンやボランティア向けのイベントといった次年度に計画している活動を紹介しましょう。

参考になる年次報告書

セカンドハーベスト・ジャパン「2018年 アニュアルレポート」

ビジョンや理念、活動の考え方についてページを割いて紹介しています。「数字で見るセカンドハーベスト・ジャパン」として見開きで2018年の成果を報告しています。また、用紙を横長に使用し、デザインしているのも目を引きます。年次報告書には決まった形がないため、このような工夫で団体の独自性を伝えることができます。

Homedoor「2018年 年次報告書」

Homedoorの年次報告書のタイトルは「Challenge Document(チャレンジドキュメント)」となっており、こだわり/オリジナリティを感じます。会計報告では財務諸表を掲載するだけでなくコメントがあり、会計に詳しくない人も理解できるようになっています。また、次年度のチャレンジを巻末に掲載し、支援を募っていることや、受益者の声、データ(数値)の使い方も参考になると思います。

難民支援協会「2018年度 年次報告書」

写真はそこまで多用されていませんが、イラストがうまく使われています。ミッションが見開きでうまくまとめられています。また、数字を見出し代わりに使っている実績紹介や世界の動向や日本の動向も参考になるページです。年次報告書が説明責任のツール以外の位置づけを持っているため、動向紹介を記載していると思われます。

かものはしプロジェクト「2018年度年次報告書」

年次報告書と言えば多くは横書きですが、かものはしプロジェクトの報告書は縦書きです。日本語の場合、長文は縦書きのほうが読みやすいと言われます。これまでの活動の成果を読み物としてストーリーで伝えていることが特に参考になります。「数字で見るかものはし」も実績がまとまっていて見やすくなっています。

Literacy Volunteers of Bangor「Annual Report」

海外の事例になりますが、大型はがきのサイズで年次報告書を作成しています(タイトルは「Annual Report Card」です)。内容は「読む」というより「見る」報告書で、1年間の成果がグラフィカルに表現されています。はがきであれば電子メールでの添付でも送れますし、郵送で届けばソーシャルメディアでの拡散も期待できると思います。

UNDP「UNDP’s 2018 Annual Report」

こちらも海外事例になりますが、動画による年次報告です。これから日本でも冊子にこだわらない年次報告が増えるのではないかと想像しています。

行政に提出するため事業報告書/財務諸表はどの団体も作成しますが、年次報告書(アニュアルレポート)まで作成している団体は多くありません。年次報告書は団体の1年間の活動に関する情報がまとまっています。年次報告書を活用する視点で企画を立て、有効に利用することが重要です。

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