NPOが企業と面談するときの心構え:「営業」ではなく「協働」「連携」

NPOやNGOの多くが、企業や団体から支援を得たいと考えているのではないでしょうか。私がお手伝いしているNPO/NGOも企業・団体から支援を得ようと取り組んでいます。私がお手伝いする中で感じたことをまとめておきたいと思います。

営業ではなく渉外/協働/連携

私がお手伝いしているNPOは企業・団体に「営業する」という考え方です。果たしてこの考え方が良いのでしょうか。比較的規模が大きいNPO/NGOには企業や団体の窓口となる部署や担当者を置いています。その部署名や担当者に「営業」と付いているNPO/NGOは少なく、「営業」の代わりに「渉外」や「企業との協働」「法人連携」といった名称が多いと思います。営業は「売ること」が目的になる一方で、渉外と言えば「社外との接点を持つ」ことのほうに目的の重点を置いているとみることができます。協働や連携といった場合は、(社会問題の解決を目指して)「一緒に何ができるか考えましょう」という姿勢が表れた言葉であり、企業・団体からNPO/NGOへの支援に加えNPO/NGOが企業・団体を支援することも想定され、双方向コミュニケーションが生まれます。

私の場合、国際協力NGOで働いていたときは、「広報」だけでなく「渉外」も兼ねていました。「社外との接点を持つ」という役割で、必ずしも直接的に企業や団体からの支援に結びつかない場合でも、国際協力の集まりや広報の勉強会に参加し、自分が所属する団体の存在感や影響力を高める(プレゼンスを高める)ことにも取り組んでいました。

営業という姿勢だとできない提案

私も作成にかかわった「地球規模の課題解決に向けた企業とNGO の連携ガイドライン」(発行:国際協力NGOセンター)では、Austin J.E.の “The collaboration challenge”(2000)を参考に、連携を3つに分類しています。

 フィランソロピー型

一方的な関係の連携です。企業の NGO の活動への関与度は相対的に低く、NGO は企業に対して感謝する姿勢が見られます。
・寄付や助成金
・施設の提供や商品の貸出(無償提供)
・ボランティア、専門家(理事などのマネジメント含む)の派遣
・各種キャンペーンへの参加や協力

トランザクション型

企業と NGO の間に相互理解と信用が生まれる連携です。ミッションや価値観において類似点が見られます。リーダーシップを持った個人レベルでの強いつながりがあります。
・社員教育
・CSR 調達コンサルティング
・ステークホルダーダイアログへの参加
・アドバイザリー(助言委員会)や社外取締役として企業のガバナンスへの参加

インテグレーション型

事業に統合された連携です。ミッションや価値観が共有され、組織同士の関与度が高まります。相互に組織文化へ影響します。
・コーズマーケティング(寄付つき商品)
・共同事業(商品開発、貧困削減を目的としたビジネスなど)

3つの類型に優劣の差があるわけではありませんが、「営業」という姿勢で企業や団体と接していると「会員になってください」「寄付してください」「イベントに参加してください」といったように、フィランソロピー型の提案になってしまいがちです。結果的にトランザクション型やインテグレーション型といった企業・団体からの支援の可能性を狭めてしまっているのではないでしょうか。

視点が「営業」から「渉外/協働/連携」に変わっていくとコミュニケーションの内容も変わってきます。営業では「~してください」と表現していたことが、渉外/協働/連携になると「(一緒に)~しましょう」となります。企業・団体から見たら「寄付してください」よりも「一緒に寄付を集めましょう」のほうが取り組みを検討しやすいと思います。営業という言葉を使っているNPO/NGOであれば、一度見直してみてもいいかもしれません。

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