NPOに「評価」が浸透しないたった1つの理由

なかなかNPOには「評価」という考え方や行動が浸透しません。なぜ評価が浸透しないかを考えることで、どうしたら評価が浸透するか考えてみたいと思います。

浸透しない理由を考える前にNPOに関する評価をおさらいします。NPOの評価には2種類あります。ひとつが「組織評価」で、もうひとつが「事業評価」です。

組織評価

組織評価において評価の対象は「組織」です。理事会や総会などのガバナンス(統治の仕組み)、納税や個人情報保護などのコンプライアンス(法令順守)、会計や事業に関するアカウンタビリティ(情報公開)、資金や文書の管理、人材育成などのマネジメント(事務局運営)などを評価します。「組織診断」とほぼ同じ意味と考えていいでしょう。

事業評価

事業評価はプログラム評価とも言います。評価する対象は「事業」や「プログラム」です。事業やプログラムを、妥当性、有効性、効率性、インパクト(長期的な変化や波及効果)、持続性などの視点から価値判断します。評価の目的や実施時期によって、ニーズ評価、セオリー評価、プロセス評価、インパクト評価、効率性評価などに分類されます。

今回で対象とするのは、一部「組織評価」も含みますが、主に「事業評価」です。

NPOに評価が浸透しない理由

NPOに評価が浸透しない原因は、以下の数式で表現できます。

評価に係るコスト > 評価で得るリターン

「評価に係るコスト」が「評価で得るリターン」を上回っている限り、評価は浸透しません。「評価に係るコスト」というのは主にはお金や手間です。「評価で得るリターン」とは、寄付や助成金などの財源が確保できる、人材が確保できる、といったことが当てはまります。評価に時間や手間がかかる一方で、目に見えるリターン(いいこと)が少ないため、負担感や徒労感だけが残り、NPOに浸透しないと思うのです。

組織評価の文脈では、一部の企業や助成団体が組織診断に対する助成を始めています。その結果、評価で得るリターンが評価に係るコストを上回るケースも出てきています。NPOに評価を浸透させていくためには、以下の数式に変えていく必要があります。

評価に係るコスト < 評価で得るリターン

このようにするためには、「評価に係るコスト」を下げるか、「評価で得るリターン」を高める必要があります。評価に係るコストを下げるには、中間支援団体による研修や評価専門家の派遣など、すでに取り組みが始まっているものもあります。どのような団体でも取り組める新たな評価手法の開発やノウハウの共有なども必要でしょう。一方で、評価で得るリターンを高めるには、委託費用に評価コストを含む、評価そのものに助成する助成金をつくるなどの取り組みが考えられます。助成団体の取り組みだけではなく、評価を行う主体であるNPOも評価結果を公開し、団体信頼性の向上など長期的なリターンを考えていく必要があると思います。

いまは短期的には評価に係るコストが高い状況にありますが、それでも「評価される」より「評価する」ほうが学びが多く、ノウハウの蓄積、事業改善による評判の上昇など長期的にはリターンがあります。ぜひ身近なところから評価に取り組んでいただきたいと思っています。

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